doraの空想茶室 物草庵

日常のなかに、ホッとするひとときを。

a shell story

こんばんは。本日は、貝殻を見て思いついたお話です。開始3回目から、石じゃなくなってしまった…。


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貝に記憶があるというのは、本当だろうか。つるりと光る宝貝をまじまじ見ながら、そんなことを考えた。

ラジオから流れる音を聞きながら。

桑田佳祐が一生懸命歌ってくれてんなあ、なんて思いながら、机に広げた貝を投げてぶつける。カツーンと美しい音を鳴らしながら、貝同士ぶつかる。

つるつるな触り心地と音の美しさに、何度も何度も投げ入れた。

カツーン、つるつる、カツーン、つるつる。

妖艶な色を内に秘めて、強く嫌な匂いをふりまきながら、わたしの指先から黒い貝が逃げてゆく。

さすがに飽きたので、遊びから勝手に離脱して、ベッドに寝転がる。しばらくぼーっとしていたが、ふと横見ると、やつはまだ机の上にちょこんといた。

 

ああ

触りたくなる衝動。

指先はまた貝を求める。

いつになったらわたしはこのループから解放されるのだろうか。

 

カツーン。

美しい音が、また、耳元でささやいた。